ANATOMY(2000)ステファン・ルツォヴィツキー
うれしはずかしドイツホラー
いやあ……だってほら、ドイツホラーですもんね。
ドイツといえばコレ、というのが私の場合、まずビール。
次ウィンナー。
そして、「ドリアンかクサヤのような香ばしい個性を持つスプラッタ」の名産地である、ということ。
思い馳せれば、あんなドイツ人とかこんなドイツ人とかがまるまると育てた、発禁ホラーがズラリ脳裏に並びます。
そんなドイツホラー界に新星ですって?そりゃあもう力いっぱい期待……つうか観念してしまいますよね。
おふれの内容はメディカルホラー、ヒラタクいえば解剖もの。
とりあえずそこまで情報を仕入れた時点で想像力がうなりをあげ、瞳孔は全開、武者震いゾクゾク膝はガクガク!!
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なんてったって聞けば被害者のみなさんは、生きたまま切り開かれ、ぺろんとめくられ、よーく乾燥させられて、標本にされちゃうってんだからおぞましい。
しかも主演は「ラン・ローラ・ラン」でひたすら走りまくっただけで、全世界を釘付けにした、あのフランカ・ポテンテ。
そりゃもう、巨大なめくじのごとき予感が、ネバっこく背筋を這いずりまわりますよね。
……実際、ツカミは怖かったです。
なんせしょっぱな被害者の、恐怖の表情(産毛まで鮮明などアップ)!
キャーと目をそむけずにはいられません。
手術台からかっとまぶしいライトを見る構図、あれは怖い。
まな板上の鯉として、あのライトにこうこうと映し出された毛穴から、恐怖が気化して立ち上る!
なんせ生きながら血液、ゴムと化す!
なんだそれ~~~、酷すぎる!考えるだけで肩こるし~~~!!!
そして視線をボディに移せば、パズルのように変わり果てつつある己の肉体。
そりゃ気が遠くなるしねえ(というか死んじゃうし……というか、一刻も早く死にたいだろうし!)。
でも、アタイはハタと思ったのです。
この映画のこわさは、大半自分の想像力(恐怖心)のお手柄なんじゃない?
標本(プラスティネーションって言うんだってねぇ)の素晴らしさなどの、メディカルなデコレーションには、ぐわっと目を見張るものがあるものの、デコレーション下に隠されていたのは「ただの青春映画」という単純明快にあっけらかんとしたスポンジ状のふわふわ土台。
そして、土台を支えるべき「謎」が、きれいさっぱりナかったのであーる!
手抜き工事か!
しかもフランカ・ポテンテ演ずる医学生パウラには、あんまし恋愛が似合わんので、唐突に挿入されるラブラブシーンの狙いは一体??もしかして、ここが「ホラー」な部分なのか?とあらぬ疑いがもたげたりする。
つーか、もしも時間潰しなら、そんなとってつけたようなシーンよりは、もうちょいきっちり人体の神秘(プラスティネーション標本)を、スミからスミまで見せてくれ~~!!……と、ふつーの鬼(私)は思います。
だってね、この標本って本当にカッコかわいいんですよ。
リアルさもさることながら、ポーズや見せ方に遊び心が感じられ、そこにそいつ(標本)がいるだけで、なんかホルモン出てきそう。
剥き出しすぎる表情も、ダイレクトなだけにキュートでおちゃめ、何はさておき親近感!
水分も抜けちゃってるせいか、すっかりカラっとしてるしな。
いやホント、私はレプリカでいいんだけど、こんなん欲しいです。ヒラヒラの人体輪切りは、風呂場ののれんとして活用したい。
寝室は理科室を意識したインテリアで、骨格標本をハンガー代わりに使いたい!
まぁ、そんな物欲を刺激されまくるビジュアルはホントに良かったんですけど、それ以外は、なんっということもない、ぜんぜん無難なお話で、ほんとにドイツホラーなの?ってぐらいフツー。
ただひとつ、さすがドイツ!!とミーハーをくすぐる物件が、ダービド役のアルンドゥト・シェベリング・ゾーンレイくん 。脱げば意外とぽっちゃりしたボディに、くりんとした目があどけなく、何度も巻き戻して見ちゃうほど、か、か、かかか、かかかわいかったです……。
ともかく、ダービドのエピソードに関してだけは、心から、即死でよかった、監督がクローネンバーグさんとかフルチさんじゃなくてよかったぁぁぁぁと全力で安堵いたしました。
「アナトミー」データ
ANATOMY 2000年 ドイツ
監督
- ステファン・ルツォヴィツキー
出演
- フランカ・ポテンテ
- セバスチャン・ブロムベルグ
- ベンノ・フユルマン
- アルンドゥト・シュベリング・ゾーンレイ
- アンナ・ロース
- ホルガー・スペックハーン