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『映画』クライヴ・バーカー 血の本(2009)

Clive Barker's Book of Blood/ジョン・ハリソン

クライヴ・バーカー 血の本

目次

 

クライヴ・バーカーの映像化は、やっぱコレよね~

わーいわーい!!「血の本」ですよ!いつの間にか出てました。
8.5割ぐらい(当社比)の満足感でいっぱいです。

北村リュー様の映画としては、ミッドナイト・ミート・トレインとかすこぶる良かったんですけど、クライヴ・バーカーものの映像化としては、やっぱしこれこれ、これでなくっちゃね!とかなり浮かれてしまいました。

なんてったってこの湿っぽさ。黒カビくささ。ダークで憂鬱でおぞましい。

しかも~~~っ!ダグ・ブラッドレィがチラリと出てる!!
これ以上、何を言うことがあろうか!あるけど。

 

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感想

 

まず冒頭、お食事シーンから始まるのだが、これがもうもう、たまらんですよね!

半熟の目玉焼きの黄身の部分に、一滴の血がポタっと落ちる。
それをフォークでぐちゃぐちゃぐちゃっと混ぜて、口に運んでいくアップ。
皿の上では、ベーコンまでもが細切れと化す。

自慢じゃないが、アタイはすごい偏食で、料理を食べ進むうちに発生する、食材の汁っぽいグロさがリアルに苦手。

特に卵。どろりと崩れる半熟卵を筆頭に、ふんわり丸いオムレツですら、きちんと火を通してもらうまで直視できない!

・・・という、美食とほど遠いかわいそうなヤツなのですが、そのおかげでこのシーンから、生理的なおぞましさを、誰よりもナイスキャッチできたと思う。

 

この、お食事中の、全身傷だらけの主役の青年サイモンは、ぶっちゃけその後仕事人に拉致されて、生皮を剥がれる運命にあるのだが、青年の体に起こる現象に対し、好奇心に駆られた仕事人のために、せめて「一瞬で」息の根を止めてもらうのを条件に、これまでのいきさつを語り始める……。

 

で、そこからが本題なのでした。
ペース配分としてはやや「ん?」って構成ですけど、原作のスタンス(※1)を考えると、そうなる事情があるのだろう。

本題の舞台は、なにかといわくのある幽霊屋敷。
そこに乗り込む、心霊研究のご一行。
その屋敷の雰囲気やエピソードが、フランクやジュリアがすったもんだと頑張った、ヘルレイザーの舞台とデジャヴュするので、ソコハカとない懐かしさを感じます。
ようは、見るからに低予算ってことなんですけど。

この低予算ならではの湿度むんむんな雰囲気が、嫌だぁというか、良いわぁというか、バーカーカテゴリなんだろうなぁと思います。

主役、サイモンはあからさまに陰のある学生で、イケメンすぎず、でも妙に色気のある青年。
彼を、ぐいぐいと幽霊屋敷にいざなうのが、美人教授メアリ。

メアリは美人なんだけど、いわゆる熟女で、ちょっと疲れたような崩れたような、退廃的なキャラクター。

この、ふたりの組み合わせがね~、なんともエロいんですことよ、おくさん!!

だいたい、これでもかってぐらいカゲのある若造と、熟女の美人教授が、くんずほぐれつ、肉欲に溺れる流れでありながら、スケベがいかにもクライヴ・バーカー・カテゴリ~。

つまり、渡辺淳一あたりとはまったくもって別ジャンル!股間に入ったボカシですら、オトナSMで恍惚ホラーなムードが盛り上がるのに欠かせないのだ!

そして、このエロが、ティーンズホラーでキャピキャピの若いのが大胆に脱ぎまくる、という、バーゲンみたいなイベントとも、ワケが違うのは言うまでもない。

 

メアリにとって、肉欲や人間関係は、なんの枷でもなかった。
自己満足のためには、どんなふうにも寝返り、おのれの目的以外の犠牲はいとわない。
死者の要求を察するや、サイモンの体を、ためらいなく死者に差し出すメアリ。
サイモンの皮膚にはみるみる死者の言葉が刻まれて、数限りない文字として裂けていく。
そうかぁ。「血の本」とは、サイモンの皮膚なんだねえ。インクは、サイモンの血液ってわけかぁ。ひぃぃぃ~、痛いよぅぅぅぅ。

 

と、見ているアタイに痛みを与えつつ、やがて、サイモンの肉体は、約束どおり一瞬で血の本として完成し、メアリの所有物となる。彼の体に言葉を刻んだ死者たちのように、サイモンもまた、死者の交差点を行きかう魂となりました。

さいご、ふりむいたサイモンの目元がせつなげで、アタイは思わず「大変だったね!!」って、エア肩ポンして、ねぎらってしまいました。
もし生まれ変わった時は、トンボの群がる悪女とだけは、ほんのすこしもかかわるんじゃないよ!

ということで、アタイ的には、死者よりも、メアリがこわいこわいって話かな、という地点に着地しました。

 

ナニゲに散らかったまま終わる部分はあるものの、大騒ぎせざるを得ないようなトンデモな事故もなく、着地に成功できてよかったです。
ちなみに、皮はぎ職人(?)のおいさんの、血の海のトバッチリくらうシーン、良かったなぁ。

 

(2011,7月)

     

※1)このお話はたしか、そもそも「血の本」という短編集の、プロローグとエピローグの部分なのですばい。ハンバーガーでいうと、バンズの部分?
余談ですが、決して、「(※2)昨日の昼食が、てりやきチキンのないてりやきチキンバーガーだった」ことを根に持っての例えではない。

※2)それは、ひとくち食べたバーガーを左手に持って右手でコーヒーを飲んでいたら、てりやきチキンのみ落下するという、涙なくしては思い出せない、痛ましい事故であった……。

 

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「クライヴ・バーカー 血の本」データ

Clive Barker's Book of Blood  2009年 イギリス

監督

  • ジョン・ハリソン

出演

  • ジョナス・アームストロング
  • ソフィ・ウォード
  • クライヴ・ラッセル
  • ポール・ブレア
  • ロマーナ・アバクロンビー
  • サイモン・バムフォード
  • ジェイムズ・ワトソン
  • ダグ・ブラッドリー
  • ゴワン・カルダー
  • グラハム・コルクホーン
  • マーカス・マクロード
  • チャーリー・マクファデン
  • ジャック・ノース
  • アンドリュー・スコット=ラムゼイ
  • シボーン・ライリー

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