Clive Barker's Book of Blood/ジョン・ハリソン
目次
クライヴ・バーカーの映像化は、やっぱコレよね~
わーいわーい!!「血の本」ですよ!いつの間にか出てました。
8.5割ぐらい(当社比)の満足感でいっぱいです。
北村リュー様の映画としては、ミッドナイト・ミート・トレインとかすこぶる良かったんですけど、クライヴ・バーカーものの映像化としては、やっぱしこれこれ、これでなくっちゃね!とかなり浮かれてしまいました。
なんてったってこの湿っぽさ。黒カビくささ。ダークで憂鬱でおぞましい。
しかも~~~っ!ダグ・ブラッドレィがチラリと出てる!!
これ以上、何を言うことがあろうか!あるけど。
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感想
まず冒頭、お食事シーンから始まるのだが、これがもうもう、たまらんですよね!
半熟の目玉焼きの黄身の部分に、一滴の血がポタっと落ちる。
それをフォークでぐちゃぐちゃぐちゃっと混ぜて、口に運んでいくアップ。
皿の上では、ベーコンまでもが細切れと化す。
自慢じゃないが、アタイはすごい偏食で、料理を食べ進むうちに発生する、食材の汁っぽいグロさがリアルに苦手。
特に卵。どろりと崩れる半熟卵を筆頭に、ふんわり丸いオムレツですら、きちんと火を通してもらうまで直視できない!
・・・という、美食とほど遠いかわいそうなヤツなのですが、そのおかげでこのシーンから、生理的なおぞましさを、誰よりもナイスキャッチできたと思う。
この、お食事中の、全身傷だらけの主役の青年サイモンは、ぶっちゃけその後仕事人に拉致されて、生皮を剥がれる運命にあるのだが、青年の体に起こる現象に対し、好奇心に駆られた仕事人のために、せめて「一瞬で」息の根を止めてもらうのを条件に、これまでのいきさつを語り始める……。
で、そこからが本題なのでした。
ペース配分としてはやや「ん?」って構成ですけど、原作のスタンス(※1)を考えると、そうなる事情があるのだろう。
本題の舞台は、なにかといわくのある幽霊屋敷。
そこに乗り込む、心霊研究のご一行。
その屋敷の雰囲気やエピソードが、フランクやジュリアがすったもんだと頑張った、ヘルレイザーの舞台とデジャヴュするので、ソコハカとない懐かしさを感じます。
ようは、見るからに低予算ってことなんですけど。
この低予算ならではの湿度むんむんな雰囲気が、嫌だぁというか、良いわぁというか、バーカーカテゴリなんだろうなぁと思います。
主役、サイモンはあからさまに陰のある学生で、イケメンすぎず、でも妙に色気のある青年。
彼を、ぐいぐいと幽霊屋敷にいざなうのが、美人教授メアリ。
メアリは美人なんだけど、いわゆる熟女で、ちょっと疲れたような崩れたような、退廃的なキャラクター。
この、ふたりの組み合わせがね~、なんともエロいんですことよ、おくさん!!
だいたい、これでもかってぐらいカゲのある若造と、熟女の美人教授が、くんずほぐれつ、肉欲に溺れる流れでありながら、スケベがいかにもクライヴ・バーカー・カテゴリ~。
つまり、渡辺淳一あたりとはまったくもって別ジャンル!股間に入ったボカシですら、オトナSMで恍惚ホラーなムードが盛り上がるのに欠かせないのだ!
そして、このエロが、ティーンズホラーでキャピキャピの若いのが大胆に脱ぎまくる、という、バーゲンみたいなイベントとも、ワケが違うのは言うまでもない。
メアリにとって、肉欲や人間関係は、なんの枷でもなかった。
自己満足のためには、どんなふうにも寝返り、おのれの目的以外の犠牲はいとわない。
死者の要求を察するや、サイモンの体を、ためらいなく死者に差し出すメアリ。
サイモンの皮膚にはみるみる死者の言葉が刻まれて、数限りない文字として裂けていく。
そうかぁ。「血の本」とは、サイモンの皮膚なんだねえ。インクは、サイモンの血液ってわけかぁ。ひぃぃぃ~、痛いよぅぅぅぅ。
と、見ているアタイに痛みを与えつつ、やがて、サイモンの肉体は、約束どおり一瞬で血の本として完成し、メアリの所有物となる。彼の体に言葉を刻んだ死者たちのように、サイモンもまた、死者の交差点を行きかう魂となりました。
さいご、ふりむいたサイモンの目元がせつなげで、アタイは思わず「大変だったね!!」って、エア肩ポンして、ねぎらってしまいました。
もし生まれ変わった時は、トンボの群がる悪女とだけは、ほんのすこしもかかわるんじゃないよ!
ということで、アタイ的には、死者よりも、メアリがこわいこわいって話かな、という地点に着地しました。
ナニゲに散らかったまま終わる部分はあるものの、大騒ぎせざるを得ないようなトンデモな事故もなく、着地に成功できてよかったです。
ちなみに、皮はぎ職人(?)のおいさんの、血の海のトバッチリくらうシーン、良かったなぁ。
(2011,7月)
※1)このお話はたしか、そもそも「血の本」という短編集の、プロローグとエピローグの部分なのですばい。ハンバーガーでいうと、バンズの部分?
余談ですが、決して、「(※2)昨日の昼食が、てりやきチキンのないてりやきチキンバーガーだった」ことを根に持っての例えではない。
※2)それは、ひとくち食べたバーガーを左手に持って右手でコーヒーを飲んでいたら、てりやきチキンのみ落下するという、涙なくしては思い出せない、痛ましい事故であった……。
「クライヴ・バーカー 血の本」データ
Clive Barker's Book of Blood 2009年 イギリス
監督
- ジョン・ハリソン
出演
- ジョナス・アームストロング
- ソフィ・ウォード
- クライヴ・ラッセル
- ポール・ブレア
- ロマーナ・アバクロンビー
- サイモン・バムフォード
- ジェイムズ・ワトソン
- ダグ・ブラッドリー
- ゴワン・カルダー
- グラハム・コルクホーン
- マーカス・マクロード
- チャーリー・マクファデン
- ジャック・ノース
- アンドリュー・スコット=ラムゼイ
- シボーン・ライリー
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