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ミーハーdeCINEMA

ミーハーが、盛大にネタバレしながら映画感想をつぶやいてます。

ダンサー・イン・ザ・ダーク

DANCER IN THE DARK / ラース・フォン・トリアー

ダンサー・イン・ザ・ダーク

滅入るけど、「救い」はある

最終日の最終回に、友人と2人、滑り込み観賞。
時間的には余裕で間に合う予定だったけど、途中ロバのパン屋などに寄り、きっぷ売りのおねーさんに「ダンサー・イン・ザ・ダークにまぁ~い。」などと言った時にはもう時間もギリギリ。
しかも、「あの、それ、ここでは上映してませぇ~ん。」などと言われてはじめて、映画館を間違えたことに気付いて、別の映画館に走ってもそりゃ当然オープニングには間に合わないに決まっている。
いや、映画館に着いてからコーヒーを買い、タバコを一服しなきゃぁ間に合っていたのか?

まぁそれはよくあることだからどーでもいいの。
アタイがべっくらこいたのは、遅れて入った映画館で、二人並んで座る場所はおろか、ひとつの空席さえほとんどなかった!ってことなのです。
要するに、映画館にそんだけ人が入っているのを初めて見た。いや、厳密に言うとタイタニックの時以来2度目かな。 でもタイタニックは映画というより、イベントみたいなもんだからなぁ。盆踊りに人、集合!!みたいな。

まぁそのように、人の関心を集めるのも頷ける、見ごたえのある作品でした。
なんてったって映画が終わって場内が明るくなって、席を立ちながら殆どの人が、揃いも揃って動揺し、悔し涙にむせんだり、ボーっと放心しちゃったり、ケンケンガクガク意見を言ったり!!
私は、映画館がこんなアツイ状態なの、初めて見たヨ!!ビョークのカリスマはもちろんだけど、ラース・フォン・トリアーの揺さぶりがやっぱりすごいからだよね!

 ■続き

サテこれは、ある1人の、ファンタスティックな母親の物話でした。
彼女、セルマは病気によって、だんだん視力がなくなって、やがて盲目になるという運命を持っています。そしてその病気は、息子ジーンにも遺伝しているのだけど、彼の目は、手術を受ければ治るのです。
そういう状況を下敷きに、「キングダム」やら「奇跡の海」の、ラース・フォン・トリアーがミュージカル映画を作った!!当然ストレートな娯楽作なんか作ってるわけないもんね!!

セルマには、いくらなんでもってぐらい、いろんな不幸が次々と連鎖して、たたみかけてくるんだけど、困難をキャッチした彼女がとる行動が、いちいち「ええ?」と思うほど、ドラマなんです。

セルマはとてもピュアで、同時におろかな母親です。最大の目的に向かって、まっすぐのあまり、うまく立ち回ることに知恵を使う余裕などなかった。でもそのおろかさを、スクリーンこっちの座席から、見下せる母親などいるだろうか。
いっぱいいっぱいの中で、1番大事なものを全力で守り抜こうとしたセルマに、それは間違いだと横槍を入れる権利は、誰にもないと感じました。
ただ、だからこそ、画面のセルマに感情移入をしないよう、身構えなくっちゃヤバイっす。
こういう重い選択からは、ちょっと気持ちの距離を置かないと、本当につらくなるからねえ。

ちなみに、私はセルマ、オッケー!と思ってます。迷わず息子の目!を選んだ信念。
親として、いたずらに善悪に心を揺らすより、これと信じたことを迷いなく貫く姿勢こそが、大事な時が、あると思う。

それにしても、ミュージカルシーンが天才すぎる。どのシーンもアートなのだが、観客はラストシーンのアートで上り詰め、胸をえぐられ、果てるのだ……。

ビョークすごいなぁ、ほんとうにすごい。歌だけじゃなく、ビョークが作品と融合したから、フォン・トリアー独特の世界観に命が入った、みたいな奇跡を感じます。
そして、トリアー監督に見せられる現実と虚構に、巻き込まれ、オロオロうろたえるしかなかったという、自分のミジンコぶりにも観念する。
まったくもって、スゴイ映画だ!!!

ラース・フォン・トリアーの描きだす、やりきれなさに包まれたある種の現実は、きれいごとでコーティングされない、「痛いところ」、世の中に氾濫する「理不尽」、不器用な「優しさ」、セルマを救えない、「友情」。それをこのように見せられてつつかれるのは、ガラスをキーキーひっかく音を前に、耳がふさげない感覚に似ている……。

ただ、セルマは思いを遂げることはできたのだ。息子に、光を残せたのだ。
同情や友情にも、存在価値があって、セルマがさいごに見たものは絶望ではなくて、それがラストで、見る側にも救いをもたらしてくれた。
とはいえ、この映画をまともに食らったから、少なくとも2~3日はダウナーな気分が続いてアタイは参りました。

2001年1月

ダンサー・イン・ザ・ダーク(Blu-ray Disc)

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セルマソングス-ミュージック・フロム・ダンサー・イン・ザ・ダーク(紙ジャケット仕様)

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「ダンサー・イン・ザ・ダーク」データ

DANCER IN THE DARK  2000年 デンマーク

監督//
  • ラース・フォン・トリアー
キャスト//
  • ビョーク (セルマ)
  • カトリーヌ・ドヌーヴ (キャシー)
  • デビッド・モース (ビル)
  • ピーター・ストーメア (ジェフ)
  • ウド・キアー (ポーコルニー医師)
  • ジャン=マルク・バール (ノーマン)
  • ヴラディカ・コスティック (ジーン)
  • カーラ・シーモア (リンダ)
  • ジョエル・グレイ (オールドリッチ)
  • ヴィンセント・パターソン (サミュエル)