ミーハーdeCINEMA

ミーハーが映画やドラマを見てはあれこれとつぶやいてます。

ヴェニスの商人

The Merchant of Venice(2004)マイケル・ラドフォード

ヴェニスの商人 [DVD]

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シャイロックに感情移入

アタイ、シェイクスピアってよくわかんない……というかちょっと苦手なのかもしれない。
小中学校時代に流し読みしたきりなので、幼心でキャッチした印象をアップデートできてない自覚もあります。

シェイクスピアは、そもそもこれを喜劇として書いた。
しかしそれを前提に、皮肉や風刺として深読みすれば、多分人の数ほど、きりがなくなってしまいそう。
なにより、アタイには、そんな偉い人の真意を推理できるような知識も機知もナイのであ~る。
だから、まぁそういうことを抜きにして、ひとつの映画として、ごく素直にこれを見る。
でもまぁ演劇だからね~、と、自分に言い聞かせてはおく。

 

あらかじめ、身構えていたとおり、金貸しシャイロックが法廷でフルボッコされる展開では、いや~な気分を味わった。アル・パチーノの熱演に、良くも悪くも気持ちを乱される。
マイケル・ラドフォードさんは、シャイロックを極悪人として描かなかったから、この話を悲劇として表現しようとしたんだろうかなあ?そうも取れる感じだっただけに、シェイクスピアがそもそも、これを喜劇として書いたってことが、なんだかなあってなった。

同じ話でも、観客に見える範囲の、書き手の目線や意図はやはり重要だと思う。

 

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舞台は、16世紀のヴェニスなり。
ユダヤ人は、キリスト教徒からとてもひどいイジメを受けていました。
日本人として、キリスト教とはさほど大きく関わることもなく、これといった信仰もなくスクスク育った私には、キリスト教徒のユダヤ人に対する感情に、いまいちピンと来ないものがあったけど、この映画を見て、なんとなくイメージの輪郭が見えたような気がしてきた。

ホロコースト、アパルトヘイト。学校で学ぶ歴史だけでも、「人とは差別をする生き物」だということが、否が応でも刷り込まれる。誰かを見下すことで、自分の優位を確かめたがるのは、逆に弱さの証明でもあると思うのだけど、なかなか自身のこととして、自覚するのは難しいのだろうなあ。

 

アントーニオ(ヴェニスの商人)は、高利貸しであるユダヤ人シャイロックを心から軽蔑している。下賎な者が、窮した人に金を貸して利を得ることなど、彼の美学に反するからだ。彼なら、無利子で金を貸す。だから、「高潔なるアントーニオ」として、人々に慕われていた。
シャイロックはそんな軽蔑の視線の中での世渡りを心得ていて、赤い帽子をかぶり、つばを吐きかけられても、うわべはキリスト教徒に逆らわないで、心のなかでそっと憎悪を募らせていた。

 

シャイロックの、心の支えは金である。
もちろん支えはそれだけではない、と、子を持つ親の身としての、自然な感情は、ユダヤ人だろうとキリスト教徒だとうと、アジアの僻地のアタイんちだろーと変わりはない。だけど、それはわざわざ口にするまでもない、あたりまえのことなのだ。

大事な友人を助けるため、軽蔑している相手であるシャイロックから、自分の肉1ポンドを担保に、金を借りるアントーニオ。不幸なことに、アントーニオは財産の全てを失ってしまったので、担保である1ポンドの肉を巡って、裁判が行われる。

 

まあ、広く知れた話なので、山ほどもあるツッコミ所の、どこにポイントを絞ろうかと悩ましい。
アントーニオと価値観が異なると、もう、彼の「良さ」を汲み取る自体がムリなのだ。

だから、アントーニオはさておいて、アタイ的には、やっぱ、ポーシャの矛盾がターゲットかな。
ポーシャの男装は、ぶっちゃけ、萌えます。
ただキャラとして見た場合、法廷でトンチを効かせる頭の良さ(あるいはずるさ)と、ただのダメンズ、バサーニオの、ストレートな金の斧銀の斧胴の斧アプローチに、簡単にコロってなるオバカさが納得いかない。
しかも誓いの指輪を、他人にくれてやった男ですよ。愛を試しておきながら、ナゼ詰めない!!
ゆえ、シノゴノ格好つけても、結局、面食いなだけだったんだろうが!!と思わざるを得ない。

 

映画の中では、バサーニオは、顔がよく口がうまいだけのダメンズでしかない。
たぶん、そういう役をやるために生まれてきた、とおぼしきジョセフ・ファインズが、コスプレっぷりも華麗に大ハマリ。ほんとうにダメで、味方をする気も失せるやつ、をすごく好演してくれています。
親の遺産を遊興に浪費し、逆玉を狙うための資金を(たぶんゲイ関係)であるアントーニオに無心するような鼻持ちならないやつ、を演らせて、これ以上の役者さんがいるだろうか~。ファインズ兄弟ばんざい!

 

っというわけで、アタイはわき目も振らずアル・パチーノに感情移入させられてしまい、このお話で、爽快感どころか笑いどころか、ひどい後味の悪さを味わいました。
それでなくても、こんな世の中。慈悲とは、正義とはなんだろう。などと生真面目に考えると、とってもやりきれなくなるなぁ。

(2011年7月)

「ヴェニスの商人」データ

The Merchant of Venice  2004年アメリカ、イタリア、 ルクセンブルク、イギリス

監督

  • マイケル・ラドフォード

出演

  • アル・パチーノ  シャイロック
  • ジェレミー・アイアンズ  アントーニオ
  • ジョセフ・ファインズ  バッサーニオ
  • リン・コリンズ  ポーシャ
  • ズレイカ・ロビンソン  ジェシカ
  • クリス・マーシャル  グラシアーノ
  • チャーリー・コックス  ロレンゾー
  • マッケンジー・クルック  ランスロット
  • ヘザー・ゴールデンハーシュ  ネリッサ
  • ジョン・セッションズ  サレリオ
  • グレゴール・フィッシャー  ソラーニオ
  • ロン・クック  老人ゴボー
  • アラン・コーデュナー  テューバル
  • アントン・ロジャース
  • デヴィッド・ヘアウッド
  • ベン・ウィショーもチョコっと出てるヨ