ミーハーdeCINEMA

ミーハーが映画やドラマを見てはあれこれとつぶやいてます。

『映画』ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000)

DANCER IN THE DARK/ラース・フォン・トリアー

ダンサー・イン・ザ・ダーク

目次

滅入るけど、「救い」はある

最終日の最終回に、友人と2人、滑り込み観賞。
時間的には余裕で間に合う予定だったけど、途中ロバのパン屋などに寄り、きっぷ売りのおねーさんに「ダンサー・イン・ザ・ダークにまぁ~い。」などと言った時にはもう時間もギリギリ。

しかも、「あの、それ、ここでは上映してませぇ~ん。」などと言われてはじめて、映画館を間違えたことに気付いて、別の映画館に走ってもそりゃ当然オープニングには間に合わないに決まっている。

いや、映画館に着いてからコーヒーをのんびり一服しなきゃぁ間に合っていたのか?

まぁそれはよくあることだからどーでもいいの。

アタイがべっくらこいたのは、遅れて入った映画館で、二人並んで座る場所はおろか、ひとつの空席さえほとんどなかった!ってことなのです。
要するに、映画館にそんだけ人が入っているのを初めて見た。

いや、厳密に言うとタイタニックの時以来2度目かな。
でもタイタニックは映画というより、イベントみたいなもんだからなぁ。盆踊りに人、集合!!みたいな。

まぁそのように、人の関心を集めるのも頷ける、見ごたえのある作品でした。
なんてったって映画が終わって場内が明るくなって、席を立ちながら殆どの人が、揃いも揃って動揺し、悔し涙にむせんだり、ボーっと放心しちゃったり、ケンケンガクガク意見を言ったり!!

私は、映画館がこんなアツイ状態なの、生まれて初めて見ましたヨ!!
ビョークのカリスマはもちろんだけど、ラース・フォン・トリアーの揺さぶりがやっぱりすごいからだよね!

 

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あらすじとか感想とか

さてこれは、ある1人のファンタスティックな母親の物話でした。

彼女、セルマは病気によってだんだん視力がなくなって、やがて盲目になるという運命なんです。

そしてその病気は、息子ジーンにも遺伝しているのだけど、彼の目は手術を受けさえすれば治るのです。

そういう状況を下敷きに、「キングダム」やら「奇跡の海」の、ラース・フォン・トリアーがミュージカル映画を作った!!
当然ストレートな娯楽作なんか作ってるわけないもんね!!

セルマには、いくらなんでもってぐらい、いろんな不幸が次々と連鎖してたたみかけてくるんだけど、困難をキャッチした彼女がとる行動が、いちいち「ええ?」と思うほど、ドラマなんです。

セルマはとてもピュアで、同時におろかな母親です。
最大の目的に向かってまっしぐらに進むあまり、うまく立ち回ることに知恵を使う余裕などなかった。
でもそのおろかさを、スクリーンこっちの座席から見下せる母親などいるだろうか。

いっぱいいっぱいの中で、1番大事なものを全力で守り抜こうとしたセルマに、それは間違いだと横槍を入れる権利は、誰にもないと感じました。

ただ、だからこそ、画面のセルマに感情移入をしないよう、身構えなくっちゃヤバイっす。
こういう重い選択からは、ちょっと気持ちの距離を置かないと、本当につらくなるからねえ。

ちなみに、私はセルマ、オッケー!と思ってます。
迷わず息子の目!を選んだ信念。
親として、いたずらに善悪に心を揺らすより、これと信じたことを迷いなく貫く姿勢こそが、大事な時があると思う。

 

それにしても、ミュージカルシーンが天才すぎる。
トリアー監督の映画ゆえどのシーンをとってもアートなのだが、観客はラストシーンのアートで上り詰め、胸をえぐられ、果てるのです。

うーんやっぱビョークすごいなぁ、ほんとうにすごい。
歌だけじゃなく、ビョークが作品と融合したから、フォン・トリアー独特の世界観に命が入った、みたいな奇跡を感じます。

そして、トリアー監督に見せられる現実と虚構に、巻き込まれオロオロうろたえるしかなかったという、自分のミジンコぶりにも観念する。


まったくもって、スゴイ映画だ!!!

ラース・フォン・トリアーの描きだす、やりきれなさに包まれたある種の現実は、きれいごとでコーティングされない、「痛いところ」世の中に氾濫する「理不尽」不器用な「優しさ」セルマを救えない「友情」。

それをこのように見せられてつつかれるのは、ガラスをキーキーひっかく音を前に、耳がふさげない感覚に似ている……。

ただ、セルマは思いを遂げることはできたのだと思います。

息子に光を残せた。

同情や友情にも存在価値があって、セルマがさいごに見たものは絶望ではなくて、それがラストで、見る側にも救いをもたらしてくれた。

とはいえ、この映画をまともに食らったから、少なくとも2~3日はダウナーな気分が続いたことは確かでアタイはけっこうションボリしました。

 

2001年1月

 

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「ダンサー・イン・ザ・ダーク」データ

DANCER IN THE DARK  2000年 デンマーク

監督

  • ラース・フォン・トリアー

キャスト

  • ビョーク (セルマ)
  • カトリーヌ・ドヌーヴ (キャシー)
  • デビッド・モース (ビル)
  • ピーター・ストーメア (ジェフ)
  • ウド・キアー (ポーコルニー医師)
  • ジャン=マルク・バール (ノーマン)
  • ヴラディカ・コスティック (ジーン)
  • カーラ・シーモア (リンダ)
  • ジョエル・グレイ (オールドリッチ)
  • ヴィンセント・パターソン (サミュエル)