RAJU BAN GAYA GENTLEMAN(1992)アズィーズ・ミルザー
道端にいる人まで踊るハッピー
ラジュー役の、シャー・ルク・カーン、インドのキムタクと呼ばれる男。
見つめるうちに、どんどん胃が重くなるようなこってり系だけど、「スター」という言葉と「男前」という言葉が必ずしも一致しないインド映画の中にあって、真っ当な男前なのは確かです。
古いんだか、新しいんだかわかんないような髪型も、いいよ、大丈夫、きっとインドでは流行なんだよ。 に、に、似合ってるし!
ヒロイン、レヌを演じるのは ジュヒー・チャーウラー、極めつけのインド美人、当然、濃さも最上級。
しかもピンクの口紅で、クドさに粘りけが添加されてる。
その念の入った濃厚さときたら、たとえて言うなら、アボガドオイルに納豆のかき揚げを漬け込んで、仕上げにゴマ油を振って砂糖で食べるような感じでしょうか。
もちろんインド美女はボリュームが命、二の腕なんかもー、はちきれんばかりのたくましさだから、いつでもタイタニックのリメイクに出れちゃうんじゃないかな。
そんな二人が原色もキョーレツな衣装をつけて、大画面に並ぶんだから、それだけでもう動悸がとまらないんだけど、インド映画のサービスが、そんなハンパな程度で終わるはずもなかった!
歌うたいまくり、踊り、踊りまくり、大画面いっぱいの、大天然色。
太鼓をひとふり、踊る、まだまだ、踊る、それ、踊る、やれ、踊る、……踊る……ん~、一体いつ終わるんだろう?
などと冷静に考えてはいけないようだ。インド映画の踊りに、終わりがあるわけないんだった。
そう、彼らは果てしなく果てしなく、同じ振り付け同じ歌詞で歌い踊り、映画の途中でちょっとぐらい居眠りしたって、あるいは本気で弁当を食ったって、フト画面を見やれば、まだ同じ画面で同じコトをやってます!ここまで徹底してしつこいと、もう声援をおくらないわけにはいかなくなるよねえ。
てやんでぇぇぇぇ~、がんばれええええ~、一生やっててもいいよ~ん!
……そんな観客の声に応えて、道ばたの人まで踊ってしまう、スジガネ入りのバカバカしさ!!
そしてインドのみんなが待ちに待ってる ラブシーン、なんと、金粉がひとひら、頬をなでたかと思うと、唐突に、悶絶の舞いがスタート!
あいた口がふさがる前に、壮絶な笑いがこみあげてくるので、日頃からするめでも噛んで、あごの骨をよく鍛えておくべきだと思いました。
いつのまに降ったのか、いきなり床一面にびっしりの金の海。2人は官能の駆け引きを始めました。
背後には、最新の技術に慣れた目には、かえって斬新にも感じられる光景。
これみよがしに置かれたボートの唐突さ、そして二人のそれはそれは濃厚な、全てにトドメを刺さんばかりの、顔面の演技。絵に描いた以上にわかりやすい喜怒哀楽。
あれは、顔面の振り付けにも、あらかじめコマ送りの絵コンテ用意してるに違いない。
と、も、か、く、
『特大おリボンが風に舞います。恋もあります、仕事に悩みます、なんだかわかんないけど町中でえんえんと踊ります、なんでもかんでも、映画の全てが入ってます。』
何というか、こんなに細部がとことん濃いのに、ストーリーがちゃんとあるのも凄いこととちゃうんかな。
映画観賞後、友人と、カフェとか入って内容にツッコミ入れはじめたら、お茶の時間が3日はかかるね!
いやほんと、こんな映画が他にある?(もちろん、インド映画はこんな映画だらけらしい)
うまくつぼにヒットしたら、三日どころか、一生思い出し笑いできそうです。
さらに、おでんを煮ながら、掃除機をかけながら、身体が勝手にラジューのステップを踏むという後遺症までついている!
インド映画面白すぎです。 体力に自信がついたら、また見たいなぁ。
1997.12月
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「ラジュー出世する」データ
RAJU BAN GAYA GENTLEMAN 1992年 インド
監督
- アズィーズ・ミルザー
出演
- シャー・ルク・カーン
- ジュヒー・チャーウラー