Day of the Dead(1985)ジョージ・A・ロメロ
みんな大好き、ローズ大尉!
「死霊のえじき」なんちゅうご愛嬌な邦題のせいで、死霊のしたたりだの死霊のはらわただのとうじゃうじゃわいて出た死霊たちの中で、まぎらわしいことこの上ないんですけど、これは、ロメロ御大による、ゾンビサーガなのです。
原題はDAY OF THE DEADなので、これまでNIGHT OF THE LIVING DEADにはじまって、DAWN OF THE DEADと続けてきたロメロさんの意図を、アタイなりに気を利かせて、汲ませていただかねばならぬのです。
ロメロ監督のゾンビシリーズ、もちろん全て、単体映画として見てもイイのですよね。けど、そこは、やっぱし順番通りに見ることで、面白さが掛け算になる感じ!スターウォーズだって、そうだよね!
だからといって、シリーズすべてが名作!と言い切れるモンではありませぬ。
ひとつひとつの作品に、当然調子の良し悪しはある模様です。
ということで、結論から言うと、前作の「ゾンビ」は名作でした。でもってコレは迷作かもです。
どのみち両方めいさくなので、ロメロさんはやっぱし、偉くてスゴくてハラショーなお方!!と満場一致でウットリしましょう。
あらすじ
かの「ゾンビ」からいくとせか。世界はいまや、ゾンビだらけ。人間は限りなく全滅に近い状態であった……。
地下では、生き残りの数名が、誰が偉いかを争ったり、マッドな研究に没頭したり、マイペースで楽園を作ってみたり、精神を病んだりしていました。なのでなるようになりました。おわり。はい、あらすじはおわり。
感想
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いや、だからね、この3行の中身が濃ゆいんですってば。ふつうの3行がサバの味噌煮なら、この3行は、クジラの姿寿司ってぐらい。
……。
……。
……ワタシ、言い過ぎてますよね。
いや、たぶん、ロメロさんの脳内では、はちきれんばかりにデッカイスケールの話なんだと思うんですけど、なんせ肝心の人類がホレ、ほぼ壊滅しちゃってるので、主要登場人物は数人なのです。
ゆえに、舞台は穴ぐらヒトツでこと足りました。
ただ、そこで繰り広がる人間模様は、インデペンデンスディ程度なら、軽く追い越しちゃっていると思う。これはホンキ。
まず、とても恋人同士とは思えないほど一触即発な、サラとミゲル。
サラは強くて勇ましく、一見ピーター(byゾンビ)みたいなヒーロー的ですけど、はるかに独善的でナマイキな、オレ様ヒロイン科学者でした。
ローズ大尉の神経をわざわざ逆さに撫でたりしつつ、みんな協力するべきよ、とかどの口で言うとんじゃい。
あっ、でも、ゾンビにかじられた最愛のミゲルの腕を、ためらいもなくぶった切ったのは男前だった。ミゲルのせいで軍人が、ヒトリ死んだことよりずっと、サラにとっては緊急事態!もちろん、麻酔なんかしてる余裕はないんだけど、ちゃんと失神させてから、と良心的。
ゾンビに噛まれた恋人を、一瞬で失神させる方法?そりゃーアータ、石で2回ほど後頭部をぶん殴ればいいのです。
さすが科学者、行動が合理的。
ちなみに、最後にヘリに向かって走ってるときは、楽園に置きっぱなしにしてきたミゲルのことなど、きれいさっぱりアタマにないのは間違いナシ。ああ、愛って、愛って?
一方、兵器ミゲルは、究極の逆切れダダッコで、やることなすこと北朝鮮なみのハタ迷惑さ。
最終的に世をはかなむ時の破壊力がすごい。
祈ってるからって、アタイは絶対だまされないぞ!!殊勝に神様に祈りながら、いったい何やっとんじゃゴルァ!!!!!!!!
人生、ここぞと苦しいときも、このシーンさえ思い出せば、少なくともミゲルと赤の他人でよかった、と胸をなでおろせると思います。
そして、いつも白衣は血みどろという、自覚のないマッドサイエンティスト、フランケン博士。食事の時もゾンビや死体の肉が飛び散った血みどろ白衣を着ているのに、一切衰えてなさそーな食欲が尊敬に値する。
このシトは好きな研究に没頭しているので、いつもお目目キラキラで機嫌がよくてかわいいのだ~~。
この時は夢中でゾンビを長生き(?)させる研究をしていて、バブと名づけたゾンビに、ベートーベンを聞かせたりして可愛がっているのです。
もちろん科学者なので、倫理などという不合理なことは、キッパリと頭にありえません。
博士にしてみれば純粋なリサイクル精神で、死人の肉をゾンビに与えていたりするんだけど、その肉が、埋葬したはずの、軍人の肉だったのがバレちゃってマズかった。
埋葬したとばかり思っていた部下の肉を、ゾンビなんかに与えやがって!とばかりにローズ大尉の逆鱗にふれ、銃弾に倒れるハメになるのです。
アーメン。
博士の寵愛を受けたゾンビのバブは、博士のことを「ランチ」と思ってない史上初のゾンビでしたん。
赤ん坊のような、無垢なしぐさはゾンビミーハーの心をとりこにし、ゾンビ界のヨンさま!みたく、アイドル状態となりました。ぶっちゃけ、アカデミー賞を取ってないのが信じられん!もし歌って踊っていたら、グラミー賞ぐらいは狙えたであろう。
私もフィギュアが欲しくなり、アフィリがてら検索しても、フィギアはぜーんぶ売り切れという人気者。
近年、ゾンビと少年のハートウォーミング映画、「ゾンビーノ」ちゅーのが出てきたけど、あの発想の、「ルーツはバブ」で間違いないよね!
あと、忘れちゃいけないメインキャラ、ローズ大尉に敬礼!関係ないけど、ユアン・マクレガー似。
彼は、いろんな意味で強烈なキャラには違いないんですが、極端に気が短く、お山の大将気質で、科学の究明に寛大な理解がないという、人としてはぜんぜんありがちな凡人だと思うのに、まるで極悪人扱い。
つーか、言ってること自体は、まだ会議が終わってないから席を立つな!とか、部下を危険な目に合わせてるんだから、もっと早く研究の成果を出せ!!とか、おれの部下をゾンビに食わせんな!とか、結構まっとうな感じです。
ヘンにヒューマンぶりっこもしないし、最終的に部下を置き去りにしてひとりスタコラ逃げようとするものの、あまりにもハイテンションな死に様を見せてくれる散り際の雄姿は、忘れようにも忘れられないアッパレさ。
もし監督が井口昇あたりだったら、絶対MVP扱いだろうに!
そんな、キャラの濃さと並んで、血糊職人トム・サビーニの、必要以上にパワーアップしたお仕事ぶりが、画面から臭いがハミ出すほどに、何かを主張しています。
ぐっちょりぬっちゃりべっとりでどろどろどろ~~んなハラワタメイク(一部ホンモノもあったらしいが)もさることながら、エキストラゾンビに、いちいちバラエティーがあるのが、もうたまらん。
花嫁ゾンビに、ピエロゾンビもいたりして、画面の隅から隅までまんべんないサービス精神をありがとう!!
サテサテ、最後には、現実か夢オチかただの願望かわからない、各自が好きに解釈できる、あいまいなエピローグが余韻を持たせてくれまする。
前作のラストの記憶とオーバーラップして、それまでのハタメイワクなまでのサービス過剰なスプラッタ描写からムードも一変、いいラストやな~、と思いました。
予算の事情で、構想から規模が縮小されたと言われてますけど、この映画で予算の足りなかったぶんのエピソードが、次の、「ランド・オブ・ザ・デッド」に持ち越された模様なのです。
それを聞いたからには、1度見れば充分、と思ってたランドも、もう1度見直さなければ……。
2010年8月
↓関係ないけどこれ欲しい。
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「死霊のえじき」データ
Day of the Dead (1985年)
監督
- ジョージ・A・ロメロ
出演
- ロリ・カーディル (科学者、サラ)
- テリー・アレクサンダー (ヘリコプター操縦士、ジョン)
- ジョセフ・ピラトー (ローズ大尉)
- リチャード・リバティー (ローガン博士)
- アントン・ディレオ (サラのダメ彼、ミゲル)
- ジャーラス・コンロイ (無線技師、ビル・マクダーモット)
- ゲイリー・ハワード・クラー (スティール)
- タソ・N・スタブラキス (トレズ二等兵)
- ハワード・シャーマン (ゾンビ、バブ)
- ジョン・アンプラス (フィッシャー)
- グレゴリー・ニコテロ (ジョンソン)
- ジョージ・A・ロメロ (スカーフをたらしたゾンビ・クレジットなし)