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『映画』十三人の刺客(2010)

13 Assassins/三池崇史

映画13人の刺客稲垣吾郎

目次

 

三池崇史監督すごすぎる!!

 

三池さんは大好きな監督です。

が、ちかごろあまりにも働きすぎておられるので、なかにはやっつけの仕事もあるんじゃないだろうかと根拠もなしに疑って、ちょっと遠ざかっていたんですよね・・。

でもこの「十三人の刺客」は、大好きな人たちから次々とオススメされたので、せめてレンタルでもいますぐ見なきゃ!という思いに駆られた。

そして一目見るなり、反省しました。


うおおおお!映画館で見たかった!!と。

 

名作のリメイクであるにもかかわらず、どこをどう切っても三池監督らしさがすごく濃い、金太郎アメみたいな時代劇だね!!
さぞかし大金がかかってそうなのに、その大金がドブに落っこちることもなく、ビタ1文に至るまで、活かされていると感じました。

アタイがスポンサーだったら本望だな!

ねえ!「みなごろし」の文字ひとつとってもアートそのもの。
だから、決してワンマン映画じゃなく、三池崇史がタクトを振って数多のアート作家たちの才能を躍らせたオーケストラみたいな娯楽映画、という印象です。

見終わって、あ~おもしろかった!あ~すごかった!っと満足感半端ない。

雑感(ネタバレはあります)

 

冒頭、間宮図書のハラキリのシーンから。

静けさのなか、覚悟を決めた間宮が、腹をさぐる。
場所を確かめて、ぐっ!といく。
直接的な描写なんか無いんです!

表情と、わずかな動きと「音」ね、「音」。

それで、今、なにが起こっているのかがもうええっちゅうほどわかるんです。
見苦しい醜態はなく、このシーンだけで間宮というサムライの人物像が垣間見える。
介錯はない。
そして間宮が血の海に倒れ、息絶えた姿をカメラが上から。
ブハー!!なんてえげつない導入部だろう。

ホレボレするよ!

 

でもって、キャストがとてつもなく豪華なことに目がくらみます。
アタイは正しいミーハーだから、まずは、なにはさておきゴロちゃんですよね!

ゴロちゃん演じる斉韶さまは「将軍の弟」という、純粋培養された特権階級のお方です。

当然下々の気持ちを汲む、などという必要もまるでなく「将軍の弟」としてわが道をいくのだが、なんせ「生きてる」ということへの実感がない。
なにからなにまでつまらない。

肉を切って血にまみれたり、ハタと思いついて犬食いしたり、斉韶さまなりにいろいろお試しするのだが、なかなか「面白い」ことにめぐり合えない。

殿目線の裏切り者を皆殺したり、殿目線の据え膳と戯れて、殿目線の無礼者を切って、 あげく「山猿の骨は硬いのう」などと、素直すぎるコメントを発しながら、淡々と自分探しをするのです。

ぶっちゃけ、武士の信念をかけて殿を最期まで守り抜く鬼頭半兵衛さんですら「殿ヤバイ」と額に汗しておるのです。

そういうキャラを、飄々と、だがウェットに、チョンマゲ姿のゴロちゃんが怪演しておられます。


ぶっちゃけゴロちゃんラスボスですよ!

ひーしびれる。
ゴロちゃん渾身の演技に敬意を込めて、世界の極東からアタイが愛を叫ぶよ!!

 

十三人の刺客

 

そしてやっぱり、岸部一徳さんですね(笑)。

与えられたキャラの香ばしさもさることながら、そのピッタシ感たるや。

今回も手堅く、ミーハーのハートを総なめしてくれました。た、たぶん。

考えてもみておくれ。
もしこのキャラを、竹中直人あたりがやっていたら、話なかばで詰んじゃったと思う。
やぱし、岸部イットクは偉大。

 

あと松方弘樹という、存在。
アタイは成人するぐらいまで、ダラダラ日舞をやっていたので、ちょびっとだけだが、「型」が目につく性分なのです。

だいたい、こんなイマドキ俳優さんの多いメンツで作ってながら、元ネタを継ぐ堂々の時代劇として、これほどの貫禄を見せ付けてくれる映画になってるなんて、相当スゴイことなのでは?

そのからくりのひとつとして、キッチリとした殺陣を見せてくれる、ヒロキが偉い!!……んじゃなかろ~か、とアタイはウットリ感じました。

そのことが逆に、「ヒロキ浮いてる」と思えなくもないんだけど、それすら意図のひとつなのかも、とか、三池作品だけに、ちょっとの油断も許されません(笑)。

 

お話から、感じるテーマはかなりくっきり明確で、わざわざ武家社会とは、身分とは、などと考えなくとも、娯楽映画を楽しんでるうちに、自然と投げられたボールを自分なりにキャッチできるような、仕掛けになってたと思います。

私の場合は、あ、これは死にゆく侍のほうを、(愛を持って)コケにしてる感じもするな、とかですね。
まあなんだかんだと腑に落ちて、しっかり「自分の感受性による何か」を刷り込んでもらってる感か食いです。
言うたら本人の努力いらずの睡眠学習みたいな感じ?

ともあれ、「怖い」と「痛い」、そして「死」と直面して、はじめて生きている実感が得られた斉韶さまの、頭部がコローンと厠の隅に転がる一方で小弥太がピコーンと生き返り、このしばらく後、徳川時代が終わるとか。

まったくもって、お見事でした。

2010年、日本映画のベスト1!!だと思いますっっ。

 

2011年8月

 

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「十三人の刺客」データ

13 Assassins  2010年 日本

監督

  • 三池崇史

出演

  • 役所広司 島田新左衛門(御目付七百五十石)
  • 山田孝之 島田新六郎(新左衛門の甥)
  • 伊勢谷友介 木賀小弥太(山の民)
  • 沢村一樹 三橋軍次郎(御小人目付組頭)
  • 古田新太 佐原平蔵(浪人)
  • 高岡蒼甫 日置八十吉(御徒目付)
  • 六角精児 大竹茂助(御徒目付)
  • 波岡一喜 石塚利平(足軽)
  • 石垣佑磨 樋口源内(御小人目付)
  • 近藤公園 堀井弥八(御小人目付)
  • 窪田正孝 小倉庄次郎(平山の門弟)
  • 伊原剛志 平山九十郎(浪人)
  • 松方弘樹 倉永左平太(御徒目付組頭)
  • 吹石一恵 お艶(芸妓)/ウパシ(山の女)
  • 谷村美月 牧野千世(采女の嫁)
  • 斎藤工 牧野采女(靭負の息子)
  • 阿部進之介 出口源四郎(明石藩近習)
  • 上杉祥三
  • 斎藤歩
  • 井上肇
  • 治田敦
  • 高川裕也
  • 辰巳ヒロシ
  • 桜井明美
  • 茂手木桜子(「みなごろし」の女)
  • 神楽坂恵
  • 内野聖陽 間宮図書(明石藩江戸家老)
  • 光石研 浅川十太夫(明石藩近習頭
  • 岸部一徳 三州屋徳兵衛(落合宿庄屋)
  • 平幹二朗 土井大炊頭利位(江戸幕府・老中)
  • 松本幸四郎 牧野靭負(尾張家木曽上松陣屋詰)
  • 稲垣吾郎 松平左兵衛督斉韶(明石藩主)
  • 市村正親 鬼頭半兵衛(明石藩御用人千石)