MYSTIC RIVER /クリント・イーストウッド
目次
あらすじと雑感
むー重い。
とてつもなく重い映画。娯楽ではないよなぁ。シンドかったぁ。でもいい映画だったなぁ。
劇場にわざわざ足を運び、お一人様1800円を払い、じっくりと腰を据えて見ることに満足できるような、映画らしい映画だと思いました。
奇抜なものはないんだけど、安定感のある映像は、観客の質を問わず(私でもオッケー!)、登場人物一人一人を重く確かに印象づけてくれます。
うーん、凄いなあ。クリント・イーストウッドって天才だったんだなぁ。あたりまえか。
なんせ、至るところで上手いなぁ~って思うんだけど、その上手さに、気に障るようなおしつけがましさがなくて、素直に引き入れてくれるんだもん、すごい。
私もえー年こいてきて、より実感するんだけど、どんな人生にもふつ~に光と陰があり、クローズアップされる部分もあれば、決して誰の目にも触れることなく終わる闇もあるんですよね。
デイブの心は、あの時すでに死んでいた。心が死んだ人間の日常は、しんしんと重く湿気っていて、しずしずと深く、妻の心をもむしばんでいます。そのことが結局、もう一度デイブを殺すのです。
歴然とした被害者は、誰の目にもデイブなのだけど、視点をわずかずつずらしていけば、全ての人物が何かの形で、被害者でもあり、加害者でもあるのかなぁ。
新聞やテレビ、あるいは人づてに起こったことが伝わる。それぞれの人がそれぞれの目線で、独自の解釈をしていく。情報と、真実はまた別ものなのだけど、いちど深く刻まれた印象はもう誰にも動かせない。
ある一面だけをクローズアップし、何かを断定する恐ろしさ。けれども、それが社会というものであったりする。
もっとも、それぞれの立場に立った優柔不断なものわかりの良い社会なんて、収集がつかなくて最悪だもんね。
ともかくそんなこんなの中で縦糸横糸を巡らせ、人それぞれ、独自の人間関係を作っているんでありましょう。
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なんだかね~、飛躍しすぎかもしんないけど、一人の人間を構成するものの壮大さを思うと、遠近感がおかしくなって、めまいがするような感じになります。
たんぱく質のかたまりの中に、まるまる宇宙が入っているような。
そしてそんな壮大なものが、命を終えるとコロっと朽ちるんだからなぁ。肉体も、心の旅もひっくるめて、すべてなかったことになるんだからなぁ。
命を完結させるって、なんと豪気なことなのだろう。
それでも、デイブの人生が豪気や壮大からかけ離れ、最も悲惨に見えるのは、誰にも愛されなかった者の末路だからなのかなあとか思う・・・。
どーでもいいけど、何かと色々ある昨今、パレード前にアナベスがジミーを励ますシーンでは、「ジミー=アメリカ」に見えました。結末が明確じゃないのは、そういう誘導があるのかな?
「強いものが正しい。」その理屈は正しくないけど、現実なんだよね。
それにしても、ケビン・ベーコンの声が凄かった。この人はこんな声だったっけ?
映像と共に、それぞれの声が、とても印象に残っていました。
2004年2月
「ミスティック・リバー 」データ
- MYSTIC RIVER 2003年 アメリカ
監督
- クリント・イーストウッド
出演
- ショーン・ペン
- ティム・ロビンス
- ケビン・ベーコン
- ローレンス・フィッシュバーン
- マーシャ・ゲイ・バーデン
- ローラ・リニー
- エミー・ロッサム
- イーライ・ウォラック