社会復帰するゾンビ
目次
あらすじ
死人が墓からモリモリ這い出して、手当たりしだいお食事に励んだのはもはや過去。
今や、ゾンビ化した死人にも、「投薬による、凶暴化を抑制する治療」が可能な世の中です。
まぁ、手のほどこしようのないゾンビはそれなりの末路を迎えるしかないものの、順調に回復してしまったゾンビは、PDS患者(部分的死亡症候群)として社会復帰を強制的におすすめされ、世の荒波に放たれます。
もちろん、現実問題、「ゾンビなんかを社会の一員として、受け入れるなんてありえね~!!」
・・・と、人々のしぶとい拒絶が根付いているのが、世の常人の常でありましょう。
「敵」を定めることで、敵以外の一致団結を促すような、人間の習性もあるしな。
しかし、たとえゾンビであろうとも、愛する家族が帰ってくる!となれば話は別なのでございます。
主人公キーレンは、ゾンビ時代に人間を貪り食った後ろめたさに苦しんでいて、できれば退院を引き伸ばしたく、「まだ早いし・・・」とか、小声でアプローチを試みるのだが、医者による鶴の一声で、帰宅組に分類されます。
受け入れる父母にも、当然不安があるものの、そこは家族、わが子に再会するやいなや、嬉し涙にむせんでしまう。
まぁ、もちろん、順調にハイめでたし、とはいきません。
主人公、キーレンの住む村は、ことにゾンビを憎悪し、いまだに義勇軍(ゾンビ討伐隊)の「怒り」と「正義」が幅をきかせている地区なのです。
PDSに対する理解はほとんど進んでおらず、司祭は人々を、ゾンビ撲滅に向けて煽動する。
しかも、妹が義勇軍!!しかも司祭はケネス・クラナム(注1)!!
どうなる、キーレン!!
スポンサーリンク
感想
いやぁ、すごいドラマでございます。
ゾンビなのにヒューマンドラマて!!ねぇ?
なんせ、ゾンビの自殺(ヤク中か?)あり、ゾンビの友情あり、同性愛ネタまでからんで、家族とは、命とは、正義とは、差別とは、愛とはなんぞや!・・・という全方向から、この世に存在することの、本質を考えさせられるアプローチ。
さぞかし重くなりそうなモンなのに、致命的なダメージを負わせられるわけじゃなく、むしろ温かい気持ちがこみ上げ、静かにしみじみさせられる。
このシチュエーションにありがちな、ギャグもなければホラーでもない、ジャンル的にかなりのアクロバットを成しています。
さしあたって、主役ゾンビのキーレンに感情移入しながらみると、武器を持って鼻息を荒げている、義勇軍は恐ろしい。
村の空気が「ゾンビ許さん!」なわけだから、ゾンビの社会復帰に協力する善意の人は、家族に内緒でこっそりと。
これって、ゾンビを社会の弱者やはみだし者としてとらえたら、ちょっと問題作じゃない?
ぶっちゃけ、魔女狩り、ナチのユダヤ人迫害、ハンセン病なんかも連想するよね。
ゾンビを迫害する人物たちも「極悪人」というわけではなく、家族がゾンビとして帰ってきたら、かくまったりするし、暴走を自覚したら、行いを後悔したりするんですよ。
対立の構図のなかに、ふつうの人間像として配置されているんです。
だからこそ、自分の身におきかえて、どっちの立場に立とうが恐ろしい、とすーっと血の気が引くってモンよね。
とまぁ、そういうのをさておいても、とても面白いドラマでした。
病気で死んで、ゾンビとして元気によみがえった女の子が、人生をエンジョイしようとしてたりしてんの可愛い。
結局彼女は新天地を求めて旅立つんですけど、たぶんシーズン2で、また会えそうな予感がします。
今回はU-NEXTの配信で見ましたけど、いつ来るのかな~、シーズン2。
☆注1
あのチャナード様ですからして・・・・。
「ゾンビ・アット・ホーム」データ
- In the Flesh (2013~2014)
- 英BBC製作
監督
- ドミニク・ミッチェル
出演
- ルーク・ニューベリー(キーレン・ウォーカー)
- エミリー・ビーヴァン(エイミー・ダイアー)
- ハリエット・ケインズ (ジェム・ウォーカー)
- ステファン・トンプソン(フィリップ・ウィルソン)
- ケヴィン・サットン
- マリー・クリッチリー
- スティーヴ・クーパー
- スティーブ・エベッツ(ビル・マーシー)
- ケネス・クラナム(オディ司祭)
- リッキー・トムリンソン(ケン・バートン)
- デヴィッド・ウォームズリー