GOYA'S GHOSTS(2006)ミロス・フォアマン
怖い時代に生きた画家の視点から
ま~アレかなぁ、こんな時代のスペインに、生まれなくて良かったねぇぇ。ってハナシかなぁ~?!
そりゃあ、現代には現代ならではの、恐ろしさがあるっちゃあるのだが、いろんな歴史に学んできた分、とりあえず「よそのお国の宗教がらみ」と聞くとアタイたち、「そらヤバイ」と、どん引く機能を装備済み。義務教育の賜物ですよね。
まったくもぅ、中世の「宗教という看板をドヤ!と背負った思想」がくんずほぐれつ、あーなってこーなってこじれまくったややこしさときたら、理不尽がネギしょって、ポン酢と一緒に歩いてるみたいなモンじゃない?
そんなモンを直球で食らって、ホント、イネスは災難すぎる!
つーか、ナタリー・ポートマンほどの美女を、顔が変形するほどのヒドイ目にあわせてイイ理屈など、この世に存在してはいけないのだ!!!
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時、18世紀末のスペイン。
と言ったら、大体「あ~、そこね(汗)!」とナントナク思い当たる、激動の時代でありまするよね。そもそも、異端審問という発想からしてろくでもないもん。
この映画で描かれるのは、単に宗教上の対立というだけでなく、聖職者という建前をぶらさげた俗物の、私利私欲が屁理屈によってまかり通る、はしたなさ。
そういう、シャレになんない時代の空気や人間模様を、ワンクッションはなれたゴヤの視点を使って垣間見ることで、エキサイティングな怒りよりも、ブルーなドンヨリがアタイの心の中を、ヒタヒタヒタ、と占めていく。
それにしてもアタイ、フジツボの張り付いてないステファン・スカルスガルドをひさしぶりに見たんですけど、スカルス様のウドの大木的な、押しすぎず、引きすぎずの存在感が、語り部として大ビンゴ!
おかげで、「彼が何とかしてくれるだろう。」みたいな無駄な期待を感じずにすむので、逆に安っぽいお涙頂戴にならなくて良かったな~、とか思います。
ひょうひょうとしたゴヤの個性や、周辺の当事者たちの悲しみとか、必死さの中にも、どこか笑える要素もあって、単に暗いところだけをクローズアップしている陰気な話じゃなかったのも良かったです。
でもってやっぱし、ハビエル・バルデムとナタリー・ポートマンの真顔の演技の迫力ですよね!
イネスの運命をひっかきまわす、ハビエルがあの濃い顔で演じるロレンゾという男は、「悪」というほどたいそうなモンじゃなく、ごくありがちな俗物で、身を守るためにどうとでも転ぶし、そういう人間だからこそ世渡り上で、高い地位を得たりもする。
けれども、彼が手に入れた地位や家庭は、あまり長持ちしないんです。
そんな痛みやすい虚栄のために、イネスの存在、というロレンゾにただひとつ与えられた、おおらかで誠実な愛を、突き放してしまっているのが「惜しいっ!」つーか、スクリーンのこっちゃ側から見るといかにもな運の尽きなので、歯がゆくておかしくて悲しいのですよねえ。
だからこそ最後のシーンは印象的に余韻を引きずり、「あぁ、これが映画だなぁ~。」と、じーんとしました。
さすが巨匠、ミロス・フォアマン。
2012年8月
「宮廷画家ゴヤは見た」データ
GOYA'S GHOSTS 2006年 スペイン/アメリカ
監督
- ミロス・フォアマン
出演
- ハビエル・バルデム(ロレンゾ)
- ナタリー・ポートマン(イネス・ビルバトゥア/アリシア)
- ステラン・スカルスガルド(フランシスコ・デ・ゴヤ)
- ランディ・クエイド(国王カルロス4世)
- マイケル・ロンズデール(グレゴリオ神父)
- ホセ・ルイス・ゴメス(トマス・ビルバトゥア)
- マベル・リベラ(マリア・イザベル・ビルバトゥア)
- ブランカ・ポルティージョ(王妃マリア・ルイサ)
- ウナクス・ウガルデ(アンヘル)
- フェルナンド・ティエルブ(アルバロ)
- ジュリアン・ワダム(ジョゼフ・ボナパルト)