OLIVIER, OLIVIER/アグニェシュカ・ホランド
溺愛していた息子の失踪から六年。
失意の母の前に、わが息子オリヴィエと名乗る少年(グレゴワール・コラン)が現れます。
果たして彼は、本物のオリヴィエなのか?
目次
感想
2人の子供を持ちながら、ただオリヴィエを溺愛してしまう母。
画面から、母のまなざしを渇望する、娘の寂しさが痛いほど押し寄せてきて、なんでだよ~~!いいから早よ娘を抱きしめなよ!!ってなりました。
ギリギリのバランスで機能している家族だから、日常なのに妙に張り詰めていて、息が苦しくなるんですよね。
自分の心さえ自分の思い通りに動かせない、人間の感情のやりきれなさ。
きっと、そういうものを描いているんだろうと思うんですけど・・・。
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ところが、溺愛していた息子オリヴィエが突然失踪するんですよ!!!
そら、母は失意のズンドコに落ちますよねぇ。
そこで、どうなると思います?
なんと、父親が逃げやがる!!
なにやってんだよコラーーー!そこ、支えるとこだろ~~~っ!!とじれったくてムズムズします。
まったくもう、父親も、母親も、あんたら子供か!!
ぶっちゃけ、このドラマでいちばん大人なのって、娘なんじゃないのかなぁ。
ともかく、それでもオリヴィエ失踪から6年という時が流れ。
それぞれが、腫れ物に触れず歳月を重ね、それなりに揺れがおさまっていた親子のもとに、なんと、オリヴィエが帰ってくる!!
そして、彼が本物という決め手のないまま、家族は再び、ぎこちない暮らしをはじめるんです。
逃げたはずの父親もしれっと帰ってきて、帰ってきたオリヴィエを軸として、家族関係は痛みを伴いながらも、もう一皮むけようとしていた・・・・・。
いやいや、全くもってハードな映画でありました。
ハードで、かつ繊細な描写、もしかして、アタイの感受性が試されてる?
たぶんアタイの感受性は、性能にやや問題があるんですけど、ジンジンしたりジリジリしたりシクシクしたり、かなーり忙しかったことだけは確かです。
なんせ、愛を破壊するセックス、あれは怖い。
そして禁断かもしれないセックス、あれも怖い。
登場人物それぞれが、抱えている後ろめたさもつらいよね。
謎の向こうに角度を変えて見え隠れする、人という生き物。
その底知れなさに惹きつけられる。
姉の心情を考えれば、「ええ?」と一度は驚く超能力ネタですら、だんだん自然に思えてこなくもないし。
そして、最後に、オリヴィエ失踪の真相が暴かれて、とても複雑な気持ちになります。
うん!
こういう気持ちにさせてくれるのは、アタイ的にはいい映画!
コランが出てなかったら見てなかったかもしれないから、コランのファンで良かった。
コランの魅力
なんといっても、うさんくさくて、ちょっと崩れた気だるげなコランの色気が最高です!!
成長の途中の、アンバランスで危うい感じが、映画の内容に大ビンゴ!
アタイは、アタイは、コランがニッと笑う時の顔が好きだ~~~~っっ。
あの、謎めいた微笑が、物語の深みを、めっちゃバックアップしてるしな。
ワンポイント・アドバイス
えーーー、コランファンにとっては、とっても貴重なお宝映画!
ただし、話の内容が重くつらい上、みんなボソボソ喋るので、人によっては子守唄のように聞こえることも、な、な、ないとは言い切れませんのです……。
よって、鑑賞時にワイングラスを傾けながら……などというスタイルは危ないです。
映画の途中に、睡魔にたぶらかされぬよう、なにがなんでもドリンクはネットリと糸をひくほど濃いめのコーヒー、つまみはキムチのハバネロまぶし、オプションとしてマブタに塗るためのメンソレータムをポッケにいれて、寝ない、と神様に誓ってから見よう!
めでたくラストまで起きてさえいれば、「ジュテーム、コラン!!」と眠れぬ夜がイヤでも続くので、鑑賞直後のワインは可。
「オリヴィエ・オリヴィエ」データ
OLIVIER, OLIVIER 1992年 フランス
監督
- アグニェシュカ・ホランド
出演
- グレゴワール・コラン
- ブリジット・ルアン
- フランソワ・クリュゼ
- マリナ・ゴロヴィーヌ
- フェイユ・ガトー
- エマニュエル・モロゾフ